深い森の中の小さな水辺で

小さな舟に乗った人が

水面を見ながら言った

     

     明るいばかりじゃなくて

     木の影の落ちた水面

     

          きれいなばかりじゃなくて

     腐った葉や水草の泡が漂う水面


     そんな水面の方が

     私は美しいと思う


その言葉を誰が言ったのか

自分自身だったのか


そんな言葉を本当に聞いたのか

心の中で思っただけだったのか


夢の中だったので

よく憶えていないが


   生きていくということは

   ただ美しいものだけを手に入れることは出来ない


   けれど美しくないと思っていたものさえ

   影は光を際立たせ

   濁った水は深みを持つように

  

   すべてが重なり合って

   彩りを生み出す

 

      ただ 明るいだけではなく

      ただ 美しいだけではなく

水鏡


白紙